国際奉仕委員長 仲田吉儀
静かな法然院の森で重たい話題を語り合った
今年度の国際奉仕委員会の活動方針は、ミャンマーに対する支援を打ち出しています。これは京都東ロータリークラブの長年の国際奉仕の方向性を踏襲したものです。2021年2月に勃発した国軍によるクーデターによって、今まで通りの支援活動ができない状況でありますし、また人々の関心がウクライナ戦争に向かい、ミャンマーが忘れられそうになっているのが今日の現状と言えます。
一方、京都東ロータリークラブのミャンマーとのかかわりは1967年まで遡ります。五十年以上もの歴史の中で、多くの会員がその時々の支援活動に何らかの形で参画されてこられたわけで、現在の会員各位の中でも現地に行かれた方は多くおられ、会員の皆さんの心の中にミャンマーへの思いが定着していると思っています。
当クラブの支援活動の歴史とミャンマーをとりまく現実を踏まえて、あえて今年度もミャンマーに向き合い支援活動の灯を消したくないとの思いから、私はミャンマーへの支援を活動方針に据えました。
さて、このような活動方針をベースに、今年度の国際奉仕フォーラムは2つのイベントを企画して、これを結び付ける形の趣向を取りました。
写真家の三田崇博さんは、旅フォトグラファーとして世界各地へ赴き、世界遺産を被写体とする作品を多く世に出しておられますが、中でもミャンマーへの思いが熱く、クーデター以降は写真展を行う事がミャンマーへの支援と位置付け、各地で催されています。奥さまはヤンゴン出身のミャンマー人で、三田さんにとっては第二の故郷であるミャンマーについて、当事者目線で現状を俯瞰して創作活動を続けておられます。自称日本一写真展を多く開催している写真家として、各地の専門ギャラリーにとどまらず、人々が行き交う日常的な空間で作品を展示なさっている方です。
今回は梶田真章会員のご協力を得て、法然院の南書院、阿弥陀さまが鎮座する空間で、一週間にわたり「三田崇博写真展」~Pray for Myanmar~を一般向けに企画しました。会期中ゲストブックにご記帳いただいた人数から類推するに、三百人以上の来訪者にご覧いただいたのではないかと思います。
さて国際奉仕フォーラムですが、写真展の最終日にあわせて11月11日の午後四時から法然院で開催しました。ここでは、当クラブの国際奉仕活動をこれからどのようにやってゆけば良いのかをみんなで考えて話し合う場にしたいとの思いで、ゲストスピーカーの山口道孝さん(鎌倉中央ロータリークラブ会員)に基調講演をおねがいし、国際的な紛争、貧困、抑圧、搾取に苦しむ人々への支援活動の現場はいかなるものか、これに携わる人がこの道に身を投じた背景にどんな物語があったのか、といった個人的なお話を通して国際支援の現場に長年携わってきた人の生の声を受け止めたいと考えました。
フォーラムの冒頭、今村会長の挨拶では、京都東ロータリークラブが実施してきたミャンマーへの支援活動の歴史についてお話があり、医療支援として車椅子の寄贈を継続的に行ってきた事、また子供たちへの防災教育の推進のため百葉箱を学校に寄贈した事例、ならびに安全な水を提供するための高架水槽の設置プロジェクトの試みなど具体的な支援内容の紹介がありました。
続いて基調講演の山口道孝さんのお話です。ご自身が大学で建築を専攻されていた1970年代、ベトナム戦争が終わり社会主義体制に移行したインドシナ三国から迫害される恐れのある富裕層やインテリ層が木造船で国を脱出するいわゆるボートピープルが発生。日本への上陸を果たしたボートピープルは一万人超。海上で大型船に救助されて日本へ避難してきた人々の支援にたずさわる山口さんは、彼らが海上で目撃した助からずに海に投げ出された人々の生々しい悲劇の様相を聞き、これでよいのだろうか?と疑問を持ったことが国際人道支援に身を投じる契機であったとのお話でした。
また1980年代初頭、タイのカンボジア難民キャンプでクメール・ルージュ(ポルポト派)の兵士に両親を目の前で惨殺され、心をかたくなに閉ざした少女との出会い。その少女がやがて少しずつ心を開いてゆく姿を話してくださいました。この少女はカンボジアの暗黒時代に発生した無数の犠牲者の一人に過ぎず、けっして他人事では済まされないと思った出来事だそうです。
ご自身、二日前に東チモールでの支援活動から帰国されて休む間もなく京都に来て下さった現役の活動家でいらっしゃる山口さんですが、世界で起こっている見過ごせない問題に関心を持ち、どんな小さなことでもよいからできることを具体的に始めようと力説されました。
苦しむ人たちへの支援活動をやっても戦争はなくならず、支援活動は根本的な解決につながらないのではないかとの批判にどのようにお答えになるのかとの私の質問に対して、山口さんは次のように答えてくれました。
「世界の現実をかたちづくっているのは全世界の一人一人の行動の結果だと思う。一人一人の日常的な行動を世界が良くなる方向に少しだけ変えることがいずれ良い世界に変えてゆくことになると信じたい。」
ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。