吉田山は京都市内の北東部に位置し、ちょうど京都大学キャンパスと大文字山の間にあります。南北800m、東西300mの縦長の低い丘陵地です。頂上は今出川通りの北端の登山口から南に向かって200mの位置にあり、標高120mです。そして、そこから南に向かって徐々に高度が低下し、頂上から300mの位置の南端の吉田山公園では標高100mです。北端、南端それぞれの登山口の標高が70m、60mなので、山頂および吉田山公園との高度差は、それぞれ50m、40mとなります。

私たちは「インターバル速歩」(参考文献参照)のデータから、一般中高年者に1-2分以上歩いて“ややきつい”と感じる強度の(10点満点中7点以上の)「速歩」を、途切れ途切れでもいいので週合計が60分以上を目標に実施することを推奨しています。そうすれば、5か月後には体力が10%向上し(10歳若返った体力が得られ)、それに比例して高血圧、高血糖などの生活習慣病の症状も20%改善する、ことを明らかにしています。

したがって、もし、皆さんが吉田山の散策路を体力向上、健康増進のためのウォーキングコースとして活用するのなら、まず、どのコースを、どれくらいの速さで歩けば、自分にとって“ややきつい”と感じる速さになるのかを知る必要があります。

最も簡単に“ややきつい”と感じる歩行の速さを体験するには吉田山に実際登ってみることです。その理由は、誰でも「頂上を目指す」という明確な“動機付け”ができれば、自然と“ややきつい”と感じる速さで歩行をするからです。例えば、北端の登山口から最短で50mの高度差を登る時間は、低体力者なら30分以上、中体力者なら20分程度、高体力者なら15分以下でしょう。吉田山にはいろんなコースがありますが、どのコースを選択するにしても、自分が“ややきつい”と感じる速さで頂上に到達する時間を測定して記録します。そして、体力向上、健康増進のためには、吉田山を“ややきつい”と感じる速さで週合計60分登ります。例えば、低体力者が吉田山で高度差50mを登るのなら、1日1回を週合計2回登ります。中体力者なら3回、高体力者なら4回です。そうすれば、5か月後には「インターバル速歩」と同等の効果が得られるはずです。

体力が向上するにしたがっていつものコースにかかる時間が短縮するはずです。それを仲間と自慢し合い、励まし合うことが吉田山を舞台とした市民の運動の習慣化につながる、と考えます。

信州大学医学部特任教授 能勢 博

参考文献

  • 能勢 博 「山に登る前に読む本」、講談社ブルーバックス、東京、pp1-190, 2014.
  • 能勢 博 「もう山でバテない!「インターバル速歩」の威力、山と渓谷社、東京、pp1-207, 2017.
  • 能勢 博 「ウォーキングの科学」、講談社ブルーバックス、東京、pp1-233, 2019.

プロフィール

1952年11月16日生まれ。京都府出身。医師・医学博士。
京都府立医科大学卒業、同大学助手、米国イェール大学医学部博士研究員、信州大学医学部教授を経て現職。ウォーキング研究を続け20余年で、約10,000人に、これまでのウォーキングの常識を変えたといわれる「インターバル速歩」を指導してきた。趣味は登山。1981年、京都山岳会・中国天山山脈・ボゴダ・オーラ峰(5,445m)登山隊に参加。自らも登頂。「ためしてガッテン」 「あさイチ」 「今日の健康」 「世界一受けたい授業」 などテレビ出演も多数。主な著書に「ウォーキングの科学(講談社)」 「インターバル速歩で健康になる!(宝島社)」 「もう山でバテない!(山と渓谷社)」 などがある。