職業奉仕委員長 山内一正
今年度の職業奉仕フォーラムを去る3月24日(金)に開催いたしました。新型コロナウイルス感染が少し落ち着きをみせ、感染予防緩和の動きはあるものの、対策には留意して行いました。また、今年度はプログラムを2部に分けて、より多くの方々に参加していただけるよう配慮いたしましたところ、30名を超える参加者にお集まりいただき、開催させていただきました。
天候の悪い日が続き、予報では雨が心配されましたが、一足早く満開となった桜とともに、春の心地よい晴れた空気のもと、当日を迎えることが出来ました。
プログラム1では、表千家家元不審菴を見学させていただきました。お初釜に参加している会員や、ご関係の会員は、たびたび拝見している方も多いと思いますが、お初釜のご案内をいただいても、お茶事の経験がないため敷居が高い、と思っている会員も多く、今回の職業奉仕フォーラムを良き機会としていただけたかと思います。
二班に分かれて不審菴の中をご案内していただき、その後お茶席に入らせていただきました。
門を入ると一気に400年余りの歴史の中に誘われます。
門をくぐると、松風楼(しょうふうろう)のお部屋。内玄関から本玄関を通り、無一物(むいちぶつ)、七畳敷、そして九畳敷の各茶室へ。九畳敷に隣接する残月亭(ざんげつてい)。秀吉が建てた聚楽第内の利休屋敷の一部である残月亭から、月の眺めを想像しつつ路地を見る。そして、利休居士の座像がまつられている利休四畳半の粗堂へ。
利休四畳半の粗堂は、利休の年忌や皆伝相伝の茶事など、特別な意義ある茶事に使われるそうです。
その後、新席にてお茶席に入らせていただきました。
表千家様より「不審菴へは腕時計、指輪等装飾は外してお入りください。」とアナウンスがありました。その時はただ単に大切な器を傷つけないためのマナーかと思っておりましたが、実際に不審菴を見学させていただき、またお茶席に入らせていただきますと、時計を外すのは、雑踏を気にすることなくゆっくりと時を楽しむこと、また装飾品を外すのは飾らない自分を見つめること、という意味があったのかと奥深さを感じました。
その後、場所を表千家会館六階会議室に移し、表千家不審菴文庫主席研究員の原田茂弘様より「表千家の歴史とわび茶の心」と題してご講演をいただきました。表千家の歴史のお話の中に、「不審菴には『日本には必ず四季が訪れる。自然の偉大さ、いぶかしさに尊敬の念を持つ。』という思いが込められている。」とのお話がありました。また、「わび茶の心として、亭主と客の心の交わり、心を尽くしたもてなしの中に人と人との心の交わりがある。心を尽くすことを表す『一期一会』という言葉は、『一生涯で一度の出会い』というよりは、本来は『人生は一度きり、相手に対して精一杯の誠意を尽くす』という意味合いがある。」とのお話を頂きました。茶の心をとおして職業奉仕の根幹に触れさせていただけたと思います。格別のご配慮賜りました三木町会員はじめ、打ち合わせから当日の進行含め、心温まるご配慮を賜りました表千家の多くの皆様に心より感謝申し上げます。
その後、プログラム2として、会場を京料理萬重に移し、三代目主人田村圭吾様より「京料理を通して考える心」と題してご講演を賜りました。 田村様は三代目として家業に従事する傍ら、日本及び世界食文化の継承や食育を推進し、「日本料理アカデミー」の設立に参加され、地域食育副委員長として全国の小中校生、大学生の指導を続けておられるとのことでした。そして、文化庁から「文化交流大使」の使命を受けて、世界6か国に派遣された経験から、それぞれの国でのエピソードをご披露いただきました。
また、世界が注目する京料理(日本料理)の秘密や、今考えなければならない自国文化について、ユーモアを交えお話しいただきました。懇親会前の短い時間に、盛り沢山のお話をいただき、食文化に対する熱き想いと、日本人の心を学ばせていただきました。そんな思いの込められた美味しいお料理を、これまた美味しいお酒とともに、時間を忘れて楽しくいただきました。
両プログラムを通して、表千家不審菴様、京料理萬重様が、脈々と受け継がれる伝統を生業とし、真っ向から受け止め、時代とともに変化する中で後世に良きものを残す努力をされていることを感じました。そこには、形は違えども「真実かどうか、みんなに公平か、好意と友情深めるか、みんなのためになるかどうか」この四つのテストが生かされていると感じました。
このフォーラムを開催するにあたり、お力を賜りました関係各位、職業奉仕委員会の皆様、またご参加いただきました皆々様に心より感謝申し上げますとともに、何か心に残るものを感じていただけましたら幸いです。