職業奉仕フォーラム報告

職業奉仕委員長 駒井 潤

2023年7月28日(15:00~16:30)京都文化博物館6階展示室にて職業奉仕フォーラムを開催させていただきました。当日は会員36名、ご家族5名、合計41名の出席がありました。

本年度は会長テーマとして「誇りを繋げる」~継続は力なり~を掲げておられますが、京都では数多くの伝統文化、伝統産業が誇りを持って事業に取り組み、その継承に励んでおられます。私自身も、能と京舞という2つの伝統芸能を継承している片山家で仕事をしておりますが、このテーマは、まさに、私たちが日々積み重ねていることをそのまま一言っていただいているように思いました。それで、今回は職業奉仕フォーラムとして、京都文化博物館で行われる片山家能楽・京舞保存財団主催の能装束・能面展において西陣織に支えられている能装束の数々を鑑賞した上で、能装束を身に着ける能楽師と能装束の作り手の両者の講演を実施しようと考えました。能という芸能を継承することを縦の繋がりとするならば、その芸能を支えている伝統産業を横の繋がりとしてとらえ、両者の存在が長い歴史の中で京都ブランドを紡いできたことを理解していただきたいという思いを持ってのことでした。

フォーラムのテーマを「継ぐ、繋げる京都の伝統」とし、講師に観世流能楽師片山九郎右衛門氏と渡文株式会社の渡辺尚美氏を迎え、ご講演をいただきました。

片山九郎右衛門氏は江戸時代に天皇が朝廷で主催される禁裏御能に奉仕をしていた片山家の嫡男で、2011年に十世片山九郎右衛門を襲名されました。日本を代表する能楽師の一人であり、現在は公益社団法人京都観世会会長、公益財団法人片山家能楽・京舞保存財団理事長としての重責も担っておられます。

渡辺尚美氏は、西陣の渡文株式会社で能装束を制作しておられる技術者で、元西陣織工業組合理事長渡辺隆夫氏の姪であり、元渡文株式会社専務取締役で京都紫野ロータリークラブ会員の渡辺健次氏は渡辺尚美様のお父様になります。

まず、片山九郎右衛門氏より片山家の能装束について説明がありました。現在、片山家には500以上の装束が所蔵されており、一番古いものは桃山期につくられたものが存在するということや、すぐれた意匠については、継承のために装束の復元をすることなどを話していただきました。

続いて渡辺尚美氏よりご自身のお仕事について、そして片山家の能装束との関わりについてお話しいただきました。渡辺尚美氏は元々織物の織り手ではなかったが、渡文株式会社に一時、織り手がいなくなり自分がせざるを得ない状況になり、苦労をして技術を習得していったことなどの話がありました。

そして、渡部尚美氏が手掛けて復元をした装束の実物を見ながら、装束を使う側、装束を作る側、それぞれの立場から、復元の経緯や装束にまつわるエピソードなどを伝えていただきました。質疑応答の時間においても、多数の質問があり、講師のお二人にはたいへん丁寧にお答えいただきました。

最後の中村会長の謝辞の中で、「お二人がご自身の仕事が好きだということがとてもよくわかった。自分の仕事を好きになるということが、継承ということに繋がるのではないか」ということを言っておられましたが、フォーラムにご参加いただいた方、それぞれに仕事を継承することについて考えていただくことができたのではないかと思います。

フォーラム終了後、会場を岡崎の六盛に移して懇親会(18:00~20:00)を行いました。懇親会には会員26名、ご家族2名、合計28名のご参加をいただきました。開宴前に観世流能楽師の橋本忠樹氏と橋本光史氏にお越しいただき、能面・能装束を着けて能の実演をしていただきました。月の世界から舞い降りた天女の美しい舞と朗々たる謡いで、能「羽衣」の世界を楽しんでいただきました。懇親会は職業奉仕副委員長の高橋会員のご紹介でお席を用意していただき、たいへんきれいな広間で美味しいお料理を堪能することができました。

ご参加いただきました皆様、ご協力いただきました皆様、誠に有難うございました。